オーストラリア、ニューキャッスル
ところで、ioは昔から旅上手。赤ちゃんの時からだ。長時間移動でも文句を言わず、旅のこういう工程も楽しむのでとても助かる。生まれて3ヶ月ぐらいの時、神戸から東京まで戻る新幹線が大雨のため、一晩以上名古屋駅のプラットホームに止まったまま動かなかった。新幹線の席での宿泊、すごかった。ioは全く問題なく、静かにずっと18時間ぐらいその満席の新幹線の中でおとなしくしてくれた。
シドニーの空港を出て、空港の真下の駅で、シドニーの北のニューキャッスルという街までの切符を買う。両替したばかりのお金を一つ一つ確かめながら窓口で料金を払おうとすると、列の後ろにたっていた女の人が「ハイ、小銭分出してあげる」といって、ちょうどの金額を出してくれた。親切だ。オーストラリア人の第一印象ベリーグッド。でもオーストラリアの小銭って、大きさと金額が反比例していることが多くて、直感に反するので使い難かった。
建物の素敵なセントラル(中央)駅で乗り換えてニューキャッスル行きの列車に乗る。ニューキャッスルまでは長距離列車で3時間弱。ちょっと古めの列車で、きれいじゃないけどいい感じ。
窓からの景色を楽しむ。ヘンな植物や木がたくさん、建物もスタイルが変わっていて雑多で、列車の旅は外が見られるからいい。
レンタルした携帯電話でSkistが出演するミュージック・フェスティバル、This Is Not Art/Electrofringeのオーガナイザーに到着時間を知らせる。ニューキャッスルに着くと、向いにきてくれていた。20代後半の、誠実な感じの青年。ホテルへ行って、チェックインして、食事をしに出かけた。
ニューキャッスルはオーストラリアの番目に大きい街らしいのだが、そうは感じない。不景気らしく、駅とホテルが面するメインストリート沿いには空き店舗が目立つ。こんな田舎町でどんな食事が見つかるか、不安だったけれど、オーガニックでフリーレインジ(放し飼い)の牛肉のハンバーガー屋さんを見つけた。大きいし、とっても美味しい。
翌日はSkistのアーティスト・トークと、夜にはライヴ。アーティスト・トークではCDからの曲をかけながら曲作りについて話をすすめる。質問が多い。東京のシーンについて、詞の内容について、するどい質問がくる。私は人前で歌うのはぜんぜん平気なのだが、話をするのはとても緊張するタイプで、心配だったのだが、ここでも、オーストラリア人はとても和やかでリラックスできた。
その後のライブは難しかった。アーティストトークは街の役所のようなところで行われて、終わって急いでライブ会場へサウンドチェックしに向った。つくと、やはりその夜同じステージに出演するAriel Pinkという人が延々とリハーサルをやっている。時間が結局足りなくなって、私たちはサウンドチェック無しで本番を迎えてしまった。
システムが良くないのか、エンジニアが良くないのか、ステージ上の音はこもってまるで明瞭さにかける。低域がうぉ〜んとして、楽器の音程もつかめないほどだ。その割にはよく歌えたよと、サムは言ってくれたけれど、私はへこんでいた。ボーカル・バンドにはサウンドチェックは欠かせないのだ。
次のシドニーが上手くいくよう、願うしかなかった。